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2026.09.01
プレスリリース

情報工場とNTTデータ経営研究所がSERENDIPを活用した共同実験を実施

 株式会社情報工場(本社:東京都港区、代表取締役社長:藤井徳久、以下「情報工場」)は、株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:山口重樹、以下「NTTデータ経営研究所」)と共同で、書籍ダイジェストサービス「SERENDIP(セレンディップ)」を活用し、自分の専門や関心領域の外にある多様な知識や視点に継続的に触れることが、ビジネスパーソンの思考や行動、ワークパフォーマンスにどのような変化をもたらすのかを検証する実証実験を行いました。

 4週間の実証実験の結果、SERENDIPの利用後には思考の柔軟性が高まったほか、初対面や異なる背景を持つ人とのコミュニケーションへの自信、革新的なアイデアを組織に導入しようという意欲の向上が確認されました。また、記事の閲覧数が多い参加者ほど、専門外情報に対する認知負荷が低下し、知識共有および自己評価によるワークパフォーマンスの改善量が大きいという関連が確認されました。
 


研究の背景と目的
 検索やSNS、生成AIなど、利用の関心や行動履歴に合わせて表示する情報を最適化する技術は便利な反面、個人の価値観にあう情報や関心ある領域だけに囲まれる状況を作り出しています。「フィルターバブル」とも呼ばれるこうした関心外の情報からの阻害や視野の固定化は、組織のイノベーションを妨げる要因として指摘されています。

 情報工場では、組織に変革が求められている現代だからこそ、現在の業務に直接結びつかない多様な知識や視点に触れることが、ビジネスパーソンの視野を広げ、新たな発想やより良い意思決定につながるのではないかと考え、SERENDIPを運営しています。SERENDIPは、産業の変化、社会課題、テクノロジー、リベラルアーツなど幅広い分野から良書を厳選し、そのハイライトを約10分で読めるダイジェストとして提供することで、普段なら手に取らないテーマや考え方との出会いを生み出す書籍ダイジェストサービスです。近年、多様な知に触れることで柔軟な発想のある組織文化を醸成することを目的に、イノベーション創出に取り組む企業の導入が増えています。

 一方、こうした「多様な知との偶発的な出会い」が実際に人の思考や行動にどのような変化をもたらすのかを、客観的・定量的に示すことは容易ではありませんでした。そこで今回、NTTデータ経営研究所と共同で、SERENDIPを4週間利用した際の変化を検証しました。

4週間の利用で見えた、3つの変化
 NTTデータ経営研究所の従業員を対象に参加者を募り、SERENDIP利用開始前、2週間後、4週間後の3時点でアンケート調査を実施しました。実験開始時には35名が参加し、3時点すべての回答がそろった25名を主な解析対象としています。期間中は閲覧を義務づけず、通常の業務の中でSERENDIPを自由に利用してもらいました。(アンケート調査の測定領域、主な指標、項目例は4ページ目の方法詳細をご覧ください。)

1.「ほかのやり方もある」と考えられるように ― 思考の選択肢が広がる
 最も顕著な変化の一つが、「視野の広さ(どんな状況においても自分には多くの行動の選択肢がある)」でした。研究では、異なるジャンルの知識に継続的に触れることで、固定化した考え方がほぐれ、状況に応じて異なる選択肢やアプローチを考える余地が生まれた可能性が示されています。これは、新規事業や業務改革、従来の方法では対応できない課題など、「正解が一つではない状況」で別の選択肢を考えるための土台としても注目できる結果です。

2.異なるバックグラウンドを持つ人とのコミュニケーションへの心理的ハードルが低下
 意外な変化として確認されたのが、コミュニケーションに対する自信です。
 「初対面の相手とのコミュニケーション(新しく知り合った人との会話中、私はとてもリラックスしている)」と「異なる専門や文化を持つ人とのコミュニケーション(異なる専門や文化を持つ人との会話でも、たいていとても落ち着きリラックスしている)」の双方で、4週間後に有意な向上が確認されました。

 部門を越えた協働、異なる専門性を持つ人材とのプロジェクト、越境学習、オープンイノベーション、多様なバックグラウンドを持つ人との協働など、現代の企業に求められているイノベーション創出活動を進めるうえで、こうした「未知の相手と関わるための心理的ハードルの低さ」は、コンフォートゾーンを抜け出し、組織の壁を越えた変革を引き起こす契機として重要な意味を持つと考えます。

3.「革新的なアイデアを組織に持ち込む」変革マインドも向上
 
革新的なアイデアを職場に導入しようとする「アイデア実現(革新的なアイデアを職場環境に体系的に導入しようとしている)」も4週間後に有意に上昇しました。多くの企業が社員の“変革マインドの醸成”や“挑戦する組織風土づくり”を課題に掲げるなか、SERENDIPの閲覧が、変革マインドなど意欲の向上につながった点は、本実証実験における極めて意義深い成果だと考えています。

 さらに、利用状況との関係を見ると、SERENDIPの閲覧記事数が多い人ほど、有益な情報をチーム内で共有する「知識共有(有益だと思った情報は、チーム内で紹介するようにしている)」、「自己評価ワークパフォーマンス(過去2週間の間の勤務日におけるあなたの総合的なパフォーマンスは優れている)」が向上するという有意な相関も確認されました。一方、参加者全体では一律のパフォーマンス向上は確認されておらず、継続的な閲覧とパフォーマンスの関係については、今後さらに検証が必要です。

まとめ
 4週間の利用を通じて、業務に直接関係しない多様な知に触れることで、自分の中に「別の選択肢」が生まれ、未知の人や異なる背景、専門を持つ人とのコミュニケーションへの自信が高まり、革新的なアイデアを組織に持ち込み、広げようとするポジティブな変化が認められました。また、閲覧記事数が多い参加者ほど、専門外情報への認知的負荷が低下し、自己評価ワークパフォーマンスの向上幅が大きい傾向も確認されました。

今後について:組織への波及効果を、さらに検証
 今回の4週間の実験では、「知識共有」は向上した一方、他部門との連携や周囲を巻き込んで実際の活動を動かす行動については、参加者全体で有意な向上は確認されませんでした。ただし、SERENDIPを多く閲覧した人ほど、周囲を巻き込む行動や知識共有の向上と正の相関が見られました。
 今後も両社は、専門外・関心外の情報に触れることが、人の視野や創造性、組織における知識共有や変革行動にどのような価値をもたらすのかを検証し、新たな人財育成・組織開発のあり方を支援することにつなげてまいります。

<研究概要>
実施期間:2026年3月12日~4月8日(4週間)
対象:NTTデータ経営研究所の従業員
参加者:開始時35名、主要解析対象25名
方法:SERENDIP利用開始前、2週間後、4週間後の3時点でアンケートを実施
主な測定領域:視野の広さ、知的好奇心・学習志向、専門外を含む情報への態度、周囲や社会との接続、ワークパフォーマンス・エンゲージメント

 【方法】
 実験には当社従業員35名(最終解析対象25名)が4週間参加し、週4本程度配信される書籍ダイジェスト記事を、ノルマなく閲覧しました。本実験では、SERENDIPの利用によって生じる認知・態度・行動の変化を多面的に捉えるため、①視野の広さ、②知的好奇心と学習志向、③専門外を含む情報態度、④周囲や社会との接続、⑤総合的アウトカムの5領域を設定し、各領域について複数の心理・行動指標を開始前、2週間後、4週間後に測定しました。主な評価指標は以下の通りです。
 


 【結果】
 SERENDIPの4週間の利用を通じて、参加者全体では、認知的柔軟性の向上、専門外の相手とのコミュニケーションに対する自信の向上、組織内で革新的なアイデアを実現しようとする意欲の向上が確認されました(Fig. 1)。さらに、実験期間中の記事閲覧量に着目すると、多くの記事を閲覧した参加者ほど、専門外情報に対する認知負荷が低下し、知識共有行動および自己評価ワークパフォーマンスの向上幅が大きいことが示されました(Fig. 2)。これらの結果から、専門・関心領域の外にある「情報ノイズ」(※)への接触は、まず個人の認知や情報・他者への向き合い方に変化をもたらし、継続的な閲覧に伴って、知識共有やワークパフォーマンスといった行動・アウトカムにも関連する可能性が示唆されました。
 ※個人の専門・関心領域の外にあり一見すると現在の業務に直接結びつかない多様な知識や視点を「情報ノイズ」と定義。情報素材としてはSERENDIPを活用。
 

結果1:情報ノイズへの接触機会を提供した対象者全体に与えた主な影響~認知面の変化

① 視野の広がり (Figure 1a)
② 専門外への情報態度 (Figure 1b)
③ 組織内での変革 (Figure 1c)
 
 
Figure 1|SERENDIP利用4週間における認知・態度・行動指標の縦断的変化

 参加者25名を対象に、SERENDIP利用前(ベースライン)、利用2週間後、利用4週間後の3時点で質問紙調査を実施した。各パネルは、7件法尺度に基づく平均値(点)と95%信頼区間(エラーバー)を示す。
 a. 視野の広さ:認知的柔軟性尺度「選択肢の認識」(「どんな状況においても自分には多くの行動の選択肢がある」)。4週間の上昇度8.5%、効果量d=0.45、p<0.01。
 b. 専門外を含む情報態度:異文化コミュニケーション自信(「異なる専門や文化を持つ人との会話でも、たいていとても落ち着きリラックスしている」)。上昇度8.8%、効果量d=0.419、p<0.05。
 c. 周囲や社会との接続:変革マインド「アイデア実現」(「革新的なアイデアを職場環境に体系的に導入しようとしている」)。上昇度11.2%、効果量d=0.365、p<0.01。
 反復測定分散分析の結果、a–c のすべてでベースラインから4週間後にかけて有意な上昇が認められ、c では 2週間後から4週間後にかけても有意な上昇が認められた。
 * P < 0.05、** P < 0.01。uncorrected。


結果2:情報ノイズ(専門外の記事)閲覧数と変化量の関係
記事の閲覧数が多い人ほど、行動面を含む以下の項目の変化が大きくなりました。
① 専門外を含む情報態度(Figure 2a)
② 周囲や社会との接続(Figure 2b)
③  アウトカム(Figure 2c)
 

Figure 2 | SERENDIPの閲覧量と認知・行動・ワークパフォーマンス指標の変化量との関係

 参加者ごとの総閲覧記事数(本)と、SERENDIP利用前(ベースライン)から利用4週間後までの各指標の変化量(4週間後-ベースライン)との関係を示す。各点は参加者1名を表し、実線は傾向を示す回帰直線である。
 a. 専門外を含む情報態度: 専門外情報の認知負荷(「自分の専門外の情報を理解するのは、かなり労力がかかると感じる」)。総閲覧記事数が多いほど変化量は低下し(順位相関係数 ρ = −0.527, P < 0.01)、専門外情報に対する認知負荷が軽減する傾向が認められた。なお、本項目は逆転的に解釈されるため、変化量の低下は改善を意味する。
 b. 周囲や社会との接続: 知識共有(「有益だと思った情報は、チーム内で紹介するようにしている」)。総閲覧記事数が多いほど変化量は大きくなり(ρ = 0.424, P < 0.05)、知識共有行動の高まりが認められた。
 c. アウトカム: 自己評価ワークパフォーマンス(「過去2週間(14日間)の間の勤務日におけるあなたの総合的なパフォーマンスは優れている」)。総閲覧記事数が多いほど変化量は大きくなり(ρ = 0.484, P < 0.01)、自己評価ワークパフォーマンスの向上が認められた。
 総じて、SERENDIPの記事を多く閲覧した参加者ほど、専門外情報に対する心理的負担が低下し、知識共有行動およびワークパフォーマンスの向上が大きい傾向が示された。閲覧記事数に伴うスコア上昇量から試算すると、月間配信記事をすべて閲覧した場合、ワークパフォーマンスは尺度幅の約7.6%改善し、効果量は d = 0.318 と見積もられた。

 * P < 0.05、** P < 0.01。uncorrected.

 記事の閲覧数に伴うスコアの上昇量から試算すると、月間配信記事をすべて閲覧した場合、ワークパフォーマンスが尺度幅の約7.6%(効果量d=0.318)改善することが期待されます。また、一人当たりの投資費用に対する改善効果は、一般的な企業の健康経営施策にも匹敵する規模といえます。
 これらの結果は、従業員の関心に合う情報だけを効率的に提供するのではなく、あえて「情報ノイズ」に触れる機会を組織内に設けることが、認知的柔軟性やコミュニケーションに対する自己効力感を高め、革新的アイデアの実現やワークパフォーマンスの改善を後押しする可能性を示しています。