NEWSお知らせ

2020.12.18
プレスリリース

情報工場と九州大学、書籍ダイジェスト「SERENDIP」等を活用した調べ学習における学習行動と知識変化に関する共同研究を開始

株式会社情報工場(代表取締役社長 藤井徳久、本社所在地:東京都港区、以下情報工場)と国立大学法人九州大学(総長 石橋達朗、所在地:福岡県福岡市、以下九州大学)は共同で、調べ学習における学習行動パターンが知識の広がりにどう影響するかについて、2020年11月より共同研究を開始したことをお知らせします。
本研究は、九州大学の授業「課題協学®」内のテーマ「人間社会におけるデータの利用:2030年のデータ利用サービスをデザインする」において、様々な資料を調べる「調べ学習」で取った学習行動と、それにより知識がどのように広がったかをデータ化・分析し、学習者が効果的に知識を広げることのできるパターンを見出すものです。



九州大学は、2013年度より学生が自身のパソコンを授業で用いるシステムBYOD(※1)の導入をはじめ学習環境のデジタル化を実施し、最近では、学習履歴やラーニングアナリティクス(※2)といった教育データの活用など先進的な取り組みを行っています。「能動的学習能力」を礎に自律的な改革を続けていることから、学生だけではなく就職人気企業からも評価が高い教育機関です。
情報工場は、視野を広げ新しい発想のきっかけとなる情報を提供することをミッションに、ビジネスからリベラルアーツ、ベストセラーから隠れた名著まで様々な分野の良書をダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」を運営しています。イノベーションを創出する発想とひらめきのある組織文化を醸成するツールとして多くの企業に利用される一方、近年では、人材育成研修プログラムの一環としても活用が増えています。
(※1) BYOD (Bring Your Own Device): 個人用の PC やタブレットを活用すること。九州大学は、国立の総合大学として初めて、2013年度の新入生からPC必携とした
(※2)情報通信技術(ICT)を用いて、 教員や学生からどのような情報を獲得し、どのように分析・フィードバックすれば、どのように学習・教育が促進されるかを研究する分野

昨今の変化の激しい時代には、新たな知識を学び、それらを組み合わせて柔軟な発想を生むことが必要とされています。一方、これまでWebや図書館、知識コンテンツなどを含む多様な情報に対して、どのような学習行動が効果的に知識を広げるかについては分析されていませんでした。本研究は、学生向けのみならず、社会人向け学習プログラムにおける効果的な学習環境のデザイン、構築に貢献するとともに、学習行動に対する効果測定としてもこれまでにない示唆を得られると考えています。
具体的には、学生は、Web検索・図書館等における資料閲覧、情報工場が運営する書籍ダイジェスト配信サービス「SERENDIP」のダイジェスト閲覧の3つを用いて調べ学習を複数回にわたって行います。
全ての回の学習行動履歴を記録し、各調べ学習の終了後には、学生は、調べ学習のテーマに関連する概念(知識)を線でつないだ図(概念地図)を、調べ学習の成果として作成します。
これらの実験データから、各学生が行った調べ学習における行動履歴の時系列データをディープラーニングまたは統計的手法でクラスタリング(※3)したうえ、カテゴリ分けを行います。その上で、行動履歴のカテゴリごとの知識の広がりの違いを分析、どのような行動パターンが知識の広がりに貢献するかを考察します。
(※3)データ間の類似度にもとづいて、データをグループ分けする手法

▼概念地図のサンプル



▼共同研究の概要
期   間:2020年11月12日~2021年3月31日
研究対象者:九州大学の学生のうち研究参加に同意した学生 20~40名(予定)
使 用 物:Google Chromeがインストールされたパソコン、Google Chromeの拡張能History Master、SERENDIPダイジェストを設置したWebサーバ、インターネット、図書館の資料、SERENDIPダイジェスト

<九州大学 基幹教育院・教授 ラーニングアナリティクスセンター長 木實 新一様からのコメント>
これまで、多様な情報に対して、どのような学習行動が効果的に知識を広げるかについては十分な分析がされてきていません。本研究では、調べ学習の環境・方法と知識の広がりがどのように関わりあっているかについて具体的な分析を行い、効果的な学習環境に関する知見を得たいと考えます。「SERENDIP」は検索エンジンや図書館とは異なる特徴を持つ情報環境で、本共同研究の特色となるものだと感じています。
本研究で得られる知見をもとに、能動的な学びを効率的に支援し「アクティブラーナー」を育成することのできる学習環境やツールの実現に貢献したいと思っています。